クラウンとインレーの違い

クラウンとインレーの違い

虫歯治療などで歯を削った部分を補う補綴物として、クラウンと呼ばれるものと、インレーと呼ばれるものがあります。ではクラウンとインレーは、どのように違うのでしょうか。

 

■クラウンとインレーの違いとは?

クラウン、インレーともに削った歯を修復する治療法です。どちらも虫歯を削り、型取りを行って仕上がった修復物を装着し、機能を回復させますが、インレーとクラウンの大きな違いは、インレーは小臼歯および大臼歯といった臼歯部のみ適用されることです。

いっぽうクラウンは、前歯をはじめどの部位にも適用されます。

以下に、インレーとクラウンの違いについてもう少し詳しく説明いたします。

 

<インレー>

インレーとは、小臼歯または大臼歯に生じた虫歯を治療する際に削った部分を修復する詰め物です。インレーは歯を削る範囲がそれほど広くないことが大きなメリットです。歯を削る範囲が少ないことは、歯を長持ちさせることに繋がります。

 

インレーには保険適用のものと保険外のものがあり、保険適用は金銀パラジウムを使った金属素材で、一般的に「銀歯」と呼ばれるものです。

保険外のインレーにはジルコニアセラミックやハイブリッドセラミックなどを使った白いものが使われます。最近ではe-maxという強度に優れたインレーが注目を集めています。

 

インレーの弱点は、二次カリエスになりやすいことです。二次カリエスとは、インレーやクラウンの中で再び虫歯になってしまうことを言います。特に金属のインレーの場合、歯とインレーの間に生じた隙間から虫歯菌が入り込みやすく、二次カリエスのリスクが非常に高くなってしまいます。

 

またインレーは素材によっては割れてしまうことが挙げられます。特に第一大臼歯にインレーを装着した場合、噛むたびに強い力が加わるため、ハイブリッドインレーなどは割れるリスクが高まります。小臼歯の場合はそれほど問題になりませんが、大臼歯にインレーを適用する場合、素材の選択に注意が必要です。

 

<クラウン>

クラウンとは、根管治療の後に被せる人工歯のことです。根管治療とは、歯の神経まで虫歯が達した場合に行われる治療で、虫歯菌によって汚染された根の中をきれいに消毒します。根管治療では歯をたくさん削るため歯が薄くなってしまいます。そこへ土台を立て、型取りを行ってオールセラミックなどのクラウンを装着して機能を回復します。

 

クラウンにも保険適用のものと保険適用外のものがあります。

保険適用は前歯の場合、見える部分が白いプラスチック、裏側が金属になります。小臼歯は歯の残り具合により、金属かCAD/CAM冠という全てが白いプラスチックのものになります。大臼歯はほとんどの場合、金属のクラウンになりますが、保険算定の見直しにより、下顎の第一大臼歯のみ白いCAD/CAM冠が適用されるようになりました。ただし条件がクリアできる場合のみ適用となるため、歯科医師の判断が必要です。

 

保険適用外の場合、素材の制限を受けません。セラミックを使った白くて美しい素材が色々あるため、歯科医師と相談して決めることができます。

 

クラウンのデメリットは、歯をたくさん削ることです。根管治療は歯をたくさん削って虫歯を除去します。また神経を取った歯は栄養分が歯に届かなくなること、そして歯を削るため歯質が薄くなることからどうしても脆くなります。そのためクラウンを被せても、歯や歯の根が割れてしまうことがあります。

 

■歯を長持ちさせることを第一に考えましょう

クラウンとインレーの違いについて説明いたしました。

どちらも歯の修復物であり、機能を回復させるための治療法です。最近では審美面を考慮した良い素材がたくさん出てきました。

とはいえ、ご自身の歯に勝るものはありません。なぜインレーやクラウンの治療を行わなければならなかったのか、その理由をよく考え、今後の歯の健康を守ることを第一に考えるよう、定期検診やメンテナンスは必ず受けるようにしましょう。


お子様の定期検診の重要性

歯の定期検診は、歯とお口の中の健康に欠かせませんが、歯の定期検診は大人のためだけだと思っていませんか?定期検診は小さなお子様に対しても行われます。このお子様の定期検診は大変重要な意味合いがあります。今回は、お子さまの定期検診の重要性についてお話をしたいと思います。

 

■子どもの定期検診の目的とは

小さなお子様の定期検診の目的は、大人と同じで歯の健康を守ることです。

お子様のうちから定期検診を受診することで、虫歯の有無や歯ぐきが腫れていないか、また生えてきた歯が正しく並んでいるかどうかなどを確認します。

 

またお子さまの定期検診には、もうひとつの目的があります。それは、幼いうちから定期検診を受診することによって、大人になっても定期検診を継続することです。歯は悪くなってから歯医者を受診するのではなく、歯を守る予防の意識を持ち、歯の健康を守るために定期検診を受診する意識を持っていただくことも、小さなお子様の定期検診の目的と言えるでしょう。

お子様の定期検診は、乳歯の間から虫歯にならないよう気をつけること、そして将来の歯並びや歯の健康を守るために大変重要な役割があるのです。

 

■お子様の定期検診で行うこと

ではお子様の定期検診ではどんなことが行われるのでしょうか。

 

・歯科医師によるお口の中の確認

虫歯や歯ぐきの腫れの有無、歯並びおよび咬合の確認をします。

 

・ブラッシングや歯石除去

年齢に応じて、歯磨きや歯石除去を行います。お子様でも唾液の質や口呼吸などにより、歯石が付くことがあります。歯石が付いている場合は除去します。

ブラッシングが上手くできないお子様には、歯磨き指導を行ない、ご家庭で上手に歯磨きできるよう指導します。

 

・フッ素塗布、シーラントなどの処置

フッ素塗布を行うことで、虫歯予防の効果が高まるだけでなく、歯の表面が少し溶けた「脱灰」を治癒することが可能となります。

また一般的に「6歳臼歯」と呼ばれる第一大臼歯は、生えたばかりはとても虫歯になりやすいため、歯の溝にコーティングを行う「シーラント」という処置を行い、虫歯を防ぎます。

■お子様の虫歯について

定期検診を受けることで、保護者の方では見つけにくい虫歯が見つかることがあります。早期に治療を行うことで歯を削る量が少なくて済みます。また歯の表面が少し溶けて表面が白く濁っている「脱灰」の場合は、歯を削らずにフッ素を塗って様子を見るなど、定期検診を受けていることで小さな異常を早期に発見することが可能となります。

 

■お子様にも「虫歯にならない」ことを理解してもらいましょう

虫歯治療と聞くと、小さなお子様はとても怖がってしまいます。小学生になってもやはり虫歯治療は恐いというお子様もまだまだたくさんいます。虫歯治療をしたくなければ、虫歯にならないように気を付けることが大切です。虫歯になってから治療に来るのではなく、虫歯にならないように定期検診を受けることを、保護者の方だけでなくお子様にもゆっくりと理解してもらってください。


SPTⅡとは?

歯科治療には専門用語がたくさんあり、患者さんにとってわからないことがたくさんあると思います。今回はそんな難しい専門用語のひとつ「SPTⅡ」についてご説明いたします。

 

■「SPTⅡ」とは継続して行う歯周病治療

見慣れない、聞き慣れないこの「SPTⅡ」とは、「歯周病安定期治療」のことで、歯周病治療の一環です。

歯周病菌により歯ぐきや歯を支える歯周組織に起こる歯周病は、虫歯と並んで歯を失う大きな原因です。歯周病は痛みなどの自覚症状があまりなく、気付かないうちに症状が悪化して最終的に歯を失ってしまう怖い病気で、20代以降から発症しやすくなります。

 

歯周病は症状が悪化するにつれ、歯周ポケットの数値が深くなります。歯周病の治療は歯石除去やクリーニングを行って改善を促します。しかし中度~重度の歯周病の場合、歯周病治療を行って一時的に症状が安定しても、再発のリスクを抱えています。特に歯周ポケット数値が高いままだと、そこへ歯周病菌が侵入して歯周病が再発してしまいます。

このようなことを考慮し、安定した状態を維持するために歯周病治療を継続して行う治療が「SPTⅡ」なのです。

 

■SPTⅡで行う治療とは?

歯科医院により内容は若干異なりますが、SPTⅡで行う主な治療内容は次のとおりです。

 

・超音波器械や手動器具による歯石除去およびプラーク除去

・歯周病を誘発する因子の治療(歯周病菌を除去する投薬治療など)

・ブラッシング指導および食生活などの指導

 

歯石除去は歯周病治療に欠かすことができません。歯石が溜まることでプラークが蓄積されやすくなり、歯周病の悪化を招いてしまいます。歯石は自分では取ることが難しいうえ、歯肉の下に付着した歯石は、専用の手動器具を使って除去する必要があります。

 

またプラークは毎日歯磨きを行っていても付着するものです。プラークは柔らかい汚れですが、専用のブラシやペーストを使用することで歯の表面を磨き上げ、細菌が付着しにくい状態へと導くことができます。細菌が付着しにくい状態になると、歯周ポケットへの細菌の繁殖を抑制することができます。

 

加えて細菌が繁殖しやすい患者さんには、抗生物質を服用して細菌の繁殖を抑えることもあります。

そして適切なブラッシングが行えているかどうかのブラッシング指導とともに、歯周病を誘発しにくい食事指導を行って生活習慣病を引き起こさないよう指導します。

 

■SPTⅡは歯周病の再発を予防および進行を抑制する大切な治療

SPTⅡについてご説明しました。歯周病はいったん状態が良くなっても再発しやすい病気です。特に糖尿病などの全身疾患がある方や喫煙習慣がある方などは、再発のリスクが非常に高くなります。

歯周病菌の増加を抑制し、再発を防ぐことを目的とするSPTⅡは、歯を長持ちさせるだけでなく、全身の健康を守る非常に大切な治療です。

患者さんのお口の中の状態により通院期間は異なりますが、1~3か月に一度の間隔で治療を受けることが望ましいでしょう。


予防歯科とは何か

歯の健康志向が徐々に高まる中、歯を守るための予防歯科という言葉が少しずつ認識されていています。では予防歯科とはいったいどういうものなのか、その概念や治療について詳しく説明いたします。

 

■歯は治療するものではなく守るもの

歯の健康は、全身の健康に深く関わります。しっかり噛んで食べることで体にエネルギーが生まれ、活動することができます。またしっかり噛むことで脳が活性化されることで認知症を予防できると報告されています。

このように、体の健康の入り口は、口です。つまり歯や歯ぐきの健康が、体の健康に欠かせないと言えるでしょう。

 

しかし未だに「歯医者は歯を治療することろ」という認識が強いようです。虫歯などで調子が悪い歯を治すことは、確かに歯医者の仕事です。

しかし歯は本来治療するものではなく、悪くならないように守るべきものです。そのために毎日歯を磨き、虫歯や歯周病を予防するのです。

ただ、毎日の歯磨きだけでは汚れが完璧に落とすことは難しく、取り除けない汚れがやがてプラークとなって虫歯や歯周病を引き起こしてしまいます。

特に歯周病は痛みをほとんど感じないまま進行するため、気が付けば歯がグラグラする、口臭がひどくなってきたというような自覚症状が出たころには既に時遅し、歯を失ってしまうという最悪な状況になってしまいかねません。

 

このようなトラブルを防ぐために必要な処置が「予防」なのです。予防とは、調子が悪くなくても定期的に歯科医院を受診し、歯の健康を守るために行われる治療と定義づけられているものです。

つまり悪くなってから受診するのではなく、悪くならないような処置を受けることで虫歯や歯周病などのトラブルを予防し、良い状態を保ち続けることを目的としているのです。

 

■予防歯科で行われることとは

では予防治療ではどのようなことが行われるのでしょうか。歯科医院により若干の違いはありますが、主に次のような処置が行われます。

 

・歯科医師によるお口の中の診察

・歯周ポケット数値測定(自費診療ではない場合もある)

・歯科衛生士または歯科医師による歯石除去および専用のブラシを使った研磨

・フッ素など薬剤の塗布

・ブラッシング指導

 

予防歯科は成人の方だけではありません。お子さまの場合、ブラッシング指導やフッ素塗布を行って虫歯や歯肉炎からお口の健康を守ります。

 

■生涯ご自身の歯で食事を行うために欠かせない予防歯科

予防歯科についてご説明しました。予防歯科の目的は、歯や歯ぐきなどお口の中の健康を維持し続けることです。歯は失ってしまうと二度と元には戻りません。失ってはじめてその大切さを痛感することと思います。

予防歯科では、生涯ご自身の歯で食事を楽しみ、体の健康を作るための治療です。歯を少しでも長持ちさせるためにも予防歯科で適切なケアを行い、お口の中の良い環境を守り続けましょう。


日本と国外の予防歯科の認識の差

歯の健康意識が高まりを見せる中、日本でも歯を守る予防意識が少しずつ浸透してきました。しかし海外に比べるとその認識はまだまだ低く、その差は歴然としています。日本は海外と比べてどのくらい予防歯科の認識があるのでしょうか。

 

■依然として多い「治療のための歯科医院」

冒頭で、日本でも予防歯科の認識が少しずつ浸透してきたと述べましたが、海外と比べるとまだまだ「歯医者は歯が悪くなってから行くもの」という意識が先行しています。

歯が痛くなり「虫歯かな?」と思った頃に受診すると、当然のことながら既に症状は進行しています。歯を削り、根の治療を行い、最悪の場合抜歯になってしまうことがあります。大切な歯はいちど削ると元に戻りません。歯の神経も、抜いて根管治療を行えば痛みはなくなりますが、歯が脆くなります。そして永久歯を抜歯すると、二度と生えてきません。

抜けてしまった歯は、入れ歯やブリッジ、インプラントで補うことができます。

しかしどんなに精巧で優れた補綴物でも、天然歯には絶対に敵いません。失ってはじめて歯の大切さを痛感する人は非常に多いでしょう。

歯を削ると、最終的には歯の寿命が短くなり、歯を失うことになってしまいます。

 

それは、歯の状態が悪くなってから歯医者を受診するからです。

 

■海外との認識の違い、それは考え方の相違

では海外はどうでしょうか。欧米やスウェーデンなど諸外国の人たちは、歯が悪くならないよう、虫歯や歯周病予防のためという意識で歯医者に通っています。つまりスタート地点が日本と諸外国とでは真逆なのです。日本では悪くなると治療のために歯医者に行く。これに対し外国では、悪くならないよう、予防のために歯医者に行く。まさにこの違いです。

この違いは残存歯数にも表れており、80歳の日本人の残存歯数は平均6.8本に対し、85歳のアメリカ人の平均残存歯数は15.8本、75歳のスウェーデン人の平均残存歯数は19.5本と言われています。これは日本人が年齢を重ねるにつれて、いかに歯を失う本数が多いかがはっきりとわかる結果です。

 

日本では、歯を予防するという意識よりも、歯をどのように治療するかという考えが先行しがちです。定期的なメンテナンスを受けていると、海外の人のように年齢を重ねても歯をたくさん残すことが可能となります。今でこそ日本でも予防歯科が浸透し、メンテナンスを受ける人が増えてきました。予防観点で歯科を受診していると、もし虫歯が見つかってもそれほど大きな処置にはならないかもしれません。また歯周病は自覚症状を感じにくく、自分では歯周病になっていることに気づかないかもしれません。しかしメンテナンスを受けていると、歯周病の初期症状を見つかるかもしれません。早期に適切な治療を受ければ、歯周病の悪化を防ぐことができます。このように、予防処置を受けることで歯やお口の中を良好な状態に保ち、万が一異常が発見されても早期治療を行って悪化を防ぐことができるのです。

 

最近は予防歯科を勧める歯科医院も増えています。予防処置に力を入れている歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士が、患者様のお口の中の状態に応じた処置やケアを行ってくれるため、健康な歯を維持することができるでしょう。


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