ホームケアだけでは歯槽膿漏は治せない?
今では歯周病という呼び方でよく知られている歯槽膿漏は、30代以降では8割の方が発症すると言われている生活習慣病のひとつです。歯槽膿漏は歯周病菌の存在とお口の中が不衛生な状況が発症の原因ですが、ホームケアだけでは治すことができないのでしょうか。
■お口のなかと全身の健康に影響を与える歯槽膿漏
歯周病菌により歯ぐきや歯の周りの歯周組織に炎症が起きる歯槽膿漏は、30代以降では8割以上の方が発症していると言われており、歯を失う原因の病気のひとつです。
小中学生では歯肉炎という症状で起こりますが、成人以降、特に中高年層になると歯ぐきの腫れや出血だけにとどまらず、口臭や歯が揺れ動くなどの症状が出てくるなど、歯槽膿漏のの発症率は非常に高くなってきます。
歯槽膿漏は歯ぐきの腫れや出血が主な症状ですが、やがて歯周病菌が歯周組織にも影響を与え始めると顎の骨を吸収し、歯を支えられなくなって最後には抜け落ちてしまいます。
またその影響はお口のなかだけではなく、糖尿病や脳梗塞など全身の健康にも深く関わっている怖い病気です。
■ホームケアだけでは予防や改善が難しい・・・?
日本においては成人の8割以上が歯槽膿漏であると報告されていますが、なぜ歯槽膿漏になってしまうのでしょうか。
それはお口のなかに存在する細菌の中に歯周病菌と、口腔内の衛生環境が整っていないことが直接の原因であり、歯槽膿漏を発症しやすいような生活習慣などが間接的な原因として考えられます。
歯槽膿漏の予防は、家庭での丁寧なブラッシングが基本です。
お口のなかに存在する細菌が食べかすの中にある糖分を栄養素としてプラークを作り出し、そこに歯周病菌が棲みつくことで毒素を出し、歯ぐきの腫れや出血といった症状を引き起こします。小中学生には歯周病菌はあまり見られず、ほとんどの場合歯肉炎と診断され、その多くは丁寧なブラッシングにより改善されます。
ところが成人になると歯肉炎だけにとどまらず、少しずつ歯周組織に炎症が広がり始め、歯槽膿漏へと進行してしまいます。そのためホームケアだけでは改善が難しくなってしまいます。
その原因となるのが、歯石です。
歯石はプラークが石灰化し、石のように固くなった細菌の死骸のようなものです。
歯石そのものは毒素を出すわけではありません。しかし歯石が付着していると新たなプラークが溜まりやすくなり、歯槽膿漏の悪化を招いてしまいます。
この歯石は固く、歯にこびりついています。これをホームケアで取り除くことは困難です。また歯槽膿漏が進行すると歯石が歯ぐきの下(歯肉縁下)にまでこびりつきます。これはどう頑張ってもご自身で取ることはできません。
歯石を取るためには歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が超音波スケーラーという専用の器械を使って取り除く必要があります。
また歯肉縁下に付着した歯石は歯槽膿漏が悪化している証でもあり、取り除いておかないと更なる悪化を招いて歯槽骨を吸収してしまいます。歯肉縁下に付着した歯石は器械では取ることができず、キュレットという手動用の器具を使って丁寧に取り除いていきます。
もちろん家庭でのセルフケアは必要ですが、歯槽膿漏になるとホームケアだけでは治すことができないのです。
■ホームケアと歯科医院での処置が大切
歯肉炎の間は適切なホームケアで症状を改善することが可能です。
しかし歯槽膿漏は少しずつ進行する病気です。歯肉炎だけであったのが、やがて歯槽膿漏へと症状が進むと、ホームケアだけでは対処できません。歯科医院で歯石除去を受け、原因となるプラークや歯石を取り除き、歯槽膿漏をコントロールしなければいけません。
家庭でのホームケアと歯科医院での適切な処置で、歯槽膿漏からお口の健康を守るようにしましょう。
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